ピアノセルゲイ・ラフマニノフ/15の自作自演作品集
セルゲイ・ラフマニノフ/15の自作自演作品集
商品名 セルゲイ・ラフマニノフ/15の自作自演作品集
発売日 2021年09月22日
商品コード DYCC-4080
JANコード 4560427463247
定価(税込) 2,200円
収録時間 67分33秒

本人が自身などの曲をどのように弾いたのか?20世紀の巨人が残した貴重な音源で綴る、珠玉のアルバム。


楽曲解説付


収録内容

* MONO / # STEREO ゼンフ・スタジオ伝説の再創造 ステレオ・ヴァージョン

セルゲイ・ラフマニノフ(ピアノ)
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 (4,7,12)
レオポルド・ストコフスキー指揮 フィラデルフィア管弦楽団 (14,15)

※ 歴史的録音につき、年代相応のノイズ等が発生する箇所がございます。ご了承下さい。


  1. 練習曲「音の絵」ハ長調 Op.33-2 #

    1911年作曲。《練習曲「音の絵」》(Études-Tableaux)というタイトルが示す通り、このピアノ曲は対照的な2つの要素---高度な技巧と詩的な内容を併せ持っています。けれども、内容に関する具体的な副題は付されていないため、どんな情景を思い浮かべるかはお聴きになるあなた次第。また、ピアニストとしてのラフマニノフにとって「色」は何よりも重要なものであり、「色こそが音楽に命を与え、色が無ければ音楽は死ぬのだ」と彼は語っています。そんなラフマニノフ自身の演奏でこの名画を鑑賞できるのは、最高の贅沢ではないでしょうか。

    【解説】2021年6月ウィーンにて 平野玲音 (チェリスト)
    http://reine-h.com(平野玲音ファンクラブ公式サイト)

    セルゲイ・ラフマニノフ作曲
    オリジナル録音:不明/ゼンフ・スタジオによるステレオ録音:2009年4月13日

  2. セレナード 変ロ長調 Op.3-5 ~《幻想的小品集》より *

    《幻想的小品集》は1892年、ラフマニノフがモスクワ音楽院を卒業した頃に書いたピアノ曲集。〈セレナード〉はその終曲にあたります。セレナードとは本来、タベに恋人の窓下で奏でられた音楽で、エキゾチックな響きやダンスのリズムが聴き手の心を誘い出すかのよう。ラフマニノフは《幻想的小品集》を全4曲とする予定でしたが、チャイコフスキーが「最も有望な若手はグラズノフ、アレンスキー、そしてラフマニノフである」と述べたインタビュー記事を読み、喜び勇んでピアノに向かい、5曲目(このセレナード)を作曲したという微笑ましい逸話が残っています。

    【解説】2021年6月ウィーンにて 平野玲音 (チェリスト)
    http://reine-h.com(平野玲音ファンクラブ公式サイト)

    録音:1936年1月3日

  3. リラの花 Op.21-5 *

    1902年、ラフマニノフは従妹のナターリヤ・サーチナと結婚します。ナターリヤもモスクワ音楽院でピアノを学んだため、作曲家としての発展を望む夫のよき理解者となり、カの限り援助したそうです。〈リラの花〉は、この幸せな時期に生まれた《12の歌》の第5曲。ラフマニノフの最も有名な歌曲の一つです。本アルバムに収録されているのは、作曲家自身によるピアノ独奏用の編曲版で、歌とはまた異なる魅力をたたえています。とりわけラフマニノフの名演は、一音一音のすべてに命が輝き、朝露に濡れた草、木陰に漂うリラの香り・・・・・・といった原詩の世界を肌で感じさせてくれるのです。

    【解説】2021年6月ウィーンにて 平野玲音 (チェリスト)
    http://reine-h.com(平野玲音ファンクラブ公式サイト)

    録音:1942年2月26日

  4. ピアノ協奏曲第1番 嬰へ短調 Op.1 第2楽章 アンダンテ *

    《ピアノ協奏曲第1番》は、ラフマニノフがまだモスクワ音楽院に通っていた1890~91年の作。第2楽章アンダンテは、夢見るような雰囲気に満たされた美しい緩徐楽章です。1917年に大幅に改訂し、本人はその仕上がりに満足していましたが、その頃にはすでに《ピアノ協奏曲第2番》と《第3番》が人気を博していたため、「第1番には誰も注目してくれない」とぼやく羽目に。現在は、《第1番》の価値が見直され、あえて改訂前の初稿版を弾くピアニストもいるほどです。初稿版と改訂版を比べると、円熟期のラフマニノフが若かりし自分のどこを不服としたのか一目でわかり、興味深いですね。

    【解説】2021年6月ウィーンにて 平野玲音 (チェリスト)
    http://reine-h.com(平野玲音ファンクラブ公式サイト)

    録音:1939年12月4日&1940年2月24日

  5. 前奏曲 嬰ハ短調「鐘」Op.3-2 ~《幻想的小品集》より #

    〈前奏曲〉嬰ハ短調は、トラック2のセレナードと同じく《幻想的小品集》に収められています。ここでの前奏曲は、本来の「幕を開ける」意味を超えたピアノ曲の一ジャンル。小品集の最初ではなく2番目に置かれています。1892年の初演から程なく、〈前奏曲〉はラフマニノフのトレードマーク的な存在になり、コンサートのプログラムに入れるか、熱烈な「嬰ハ短調 ! 」の呼び声に応えてアンコールで弾かなくてはならないこともしばしばでした。「鐘」は本人が付けたタイトルではありませんが、重々しく繰り返される音型がロシアの鐘の音を連想させることから、現在もこのニックネームで親しまれています。

    【解説】2021年6月ウィーンにて 平野玲音 (チェリスト)
    http://reine-h.com(平野玲音ファンクラブ公式サイト)

    オリジナル録音:1928年4月4日

  6. スケルツォ~劇音楽《真夏の夜の夢》Op.61より #

    《真夏の夜の夢》は、ドイツの作曲家メンデルスゾーン(1809-1847)による劇音楽。ラフマニノフは、その第1曲〈スケルツォ〉をピアノ用に編曲しています。1933年、メンデルスゾーンにゆかりの深いロンドンで初めて演奏。このCDに収録されているのは、その2年後に行われた新鮮な記録です。まさに妖精たちが飛び回っているような、繊細かつ優雅なタッチを聴いた後では、オーケストラによるオリジナルが重たく感じられてしまうほど! それでいて、すべての声部が見事に弾き分けられていく様は、ピアニスト、作曲家のみならず、卓越した指揮者でもあったラフマニノフを偲ばせます。

    【解説】2021年6月ウィーンにて 平野玲音 (チェリスト)
    http://reine-h.com(平野玲音ファンクラブ公式サイト)

    フェーリクス・メンデルスゾーン・バルトルディ作曲~ラフマニノフ編
    オリジナル録音:1935年12月23日

  7. ピアノ協奏曲第4番ト短調 Op.40 第2楽章 ラルゴ *

    1917年のロシア革命によって、ラフマニノフは遠く離れたアメリカへの移住を余儀なくされました。その後は主にピアニストとして活動していましたが、1926年に久々の大作《ピアノ協奏曲第4番》を完成しています。このような経緯から、曲の端々には、彼が当時好んで聴いていたジャズの影響も。ところが初演の評判はさんざんで、ラフマニノフは1941年の本録音の形に至るまで、2度にわたって大幅な改訂を施しました。作曲者亡き今日では、「改訂する前のほうが良かったのでは」と再評価する動きが盛ん......。奥深い芸術を批評することの難しさを示す一例です。

    【解説】2021年6月ウィーンにて 平野玲音 (チェリスト)
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    セルゲイ・ラフマニノフ作曲
    録音:1941年12月20日

  8. メロディー ホ長調 Op.3-3 ~《幻想的小品集》より *

    〈メロディー〉は、前述の《幻想的小品集》において〈前奏曲〉に続く第3曲。劇的な「鐘」とは打って変わった、明るくのどかな情景が広がります。1893年の出版直後、ラフマニノフから《幻想的小品集》の楽譜を手渡されたチャイコフスキーは、この作品が非常に気に入り、特に〈前奏曲〉と〈メロディー〉を好んだと言われています。冒頭では、左手がチェロのように低い音域で歌いだしますが、右手は優しく寄り添い、その流れを妨げることがありません。打鍵から音が減衰してしまうにもかかわらず、真に優れたピアニストは心の中で歌を紡ぎ、息の長いメロディーを聴き手に届けることができるのです─ラフマニノフのように。

    【解説】2021年6月ウィーンにて 平野玲音 (チェリスト)
    http://reine-h.com(平野玲音ファンクラブ公式サイト)

    録音:1940年4月9日

  9. 愛の悲しみ #

    ラフマニノフがアメリカに到着すると、たくさんの大音楽家たちが彼のもとを訪れます。オーストリア出身のヴァイオリニスト・作曲家であるクライスラー(1875-1962) もその一人。ベートーヴェン、シューベルト、グリーグのソナタを一緒に録音するなど、ラフマニノフのよき仲間となりました。《愛の悲しみ》は、ヴァイオリンとピアノのために書かれたクライスラーの名作ですが、ラフマニノフはあえて自分の個性を加え、斬新なピアノ小品に仕立てています。原曲にあった指示「レントラー(ワルツの前身)のテンポで」も、「ワルツのテンポで」に変更。当時の社交界のさんざめきが今にも聞こえてきそうです。

    【解説】2021年6月ウィーンにて 平野玲音 (チェリスト)
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    フリッツ・クライスラー作曲~ラフマニノフ編
    オリジナル録音:1921年10月25日

  10. ひなぎくOp.38-3 #

    ロシアを離れる直前、1916年に作られた《6つの歌》は、ラフマニノフ最後の歌曲集。〈ひなぎく〉はその第3曲で、〈リラの花〉と同じく彼自身がピアノ用にアレンジしています。「今、私のほうがソリストですよ。あなたは、ピアノの語りへの答えを与えながら、私の伴奏をしているのですよ」原曲のリハーサル中、ラフマニノフが歌手コーシッツに伝えた意図は、2つの声部が絡み合うピアノ版を聴くとよくわかります。ちなみにこの〈ひなぎく〉は、クライスラーが《マーガレット》のタイトルでヴァイオリン用にも編曲しています。

    【解説】2021年6月ウィーンにて 平野玲音 (チェリスト)
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    セルゲイ・ラフマニノフ作曲
    オリジナル録音:1940年3月18日

  11. 愛の喜び #

    トラック⑨の《愛の悲しみ》と対を成す、クライスラーのヴァイオリン小品。これらに《美しきロスマリン》を加えた3曲は、「ウィーン古典舞曲集」として一つにくくられます。ところがどっこい、ラフマニノフがピアノ用に編曲した《愛の喜び》は、ウィーン風とも古典的とも言いがたい新たな境地。クライスラーのつもりで聴くと「この曲はこの先どこへ?」とハラハラしますが、大きな流れをつかめれば、ラフマニノフ語に訳されただけなのだと気づくでしょう。人を愛するはちきれんばかりの喜びが、鍵盤の上を華やかに駆けめぐります。

    【解説】2021年6月ウィーンにて 平野玲音 (チェリスト)
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    フリッツ・クライスラー作曲 ~ラフマニノフ編
    オリジナル録音:1942年2月26日

  12. ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 Op.30 第2楽章 間奏曲:アダージョ *

    《ピアノ協奏曲第3番》は、ラフマニノフの初めてのアメリカ・ツアーのために1909年に作曲されました。9月23日に全曲が完成し、翌月15日には旅立たなくてはならなかったため、彼はニューヨークに向かう船中に音の出ない鍵盤を持ちこんで、ソロパートを練習したのだとか!《ピアノ協奏曲第2番》と並ぶ、ラフマニノフの代表作の一つです。第2楽章間奏曲は、ロシアらしい愁いを帯びた主題が様々に変奏されていく雄大な緩徐楽章。(このトラックは第2楽章のみの抜粋ですが、実際には、切れ目なく演奏する「アタッカ」の指示によって第3楽章へとなだれ込みます)

    【解説】2021年6月ウィーンにて 平野玲音 (チェリスト)
    http://reine-h.com(平野玲音ファンクラブ公式サイト)

    セルゲイ・ラフマニノフ作曲
    録音:1939年12月4日 & 1940年2月24日

  13. 楽興の時 変ホ短調 Op.16-2 #

    《楽興の時》は、1896年に書かれた6曲からなるピアノ曲集。ラフマニノフはこのタイトルを、シューベルトの同名作品から取ったと思われます。ただし、彼の手紙「ある期日までに金が必要なので急いでいます...... 今月20日までに6つのピアノ曲を書き上げなければなりません」を読む限り、当時の苦境は楽に興じる優雅なイメージとはかけ離れたものでした。自分の中で聞こえている音楽をできるだけ自然に紙の上に書きつけたというラフマニノフの天賦の才。焦りや不安に突き動かされるような第2番には、こうした辛い状況すらもインスピレーションを与えたのかもしれません。

    【解説】2021年6月ウィーンにて 平野玲音 (チェリスト)
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    オリジナル録音:不明/ゼンフ・スタジオによるステレオ録音:2009年4月13日

  14. パガニーニの主題による狂詩曲 Op.43 ~第18変奏 アンダンテ・カンタービレ *

    パガニーニ(1782-1840) は、イタリア生まれの伝説的なヴァイオリニスト・作曲家。《パガニーニの主題による狂詩曲》は、彼のヴァイオリン曲《24の奇想曲》第24番の主題をもとに、ラフマニノフが1934年に作曲したものです。主題と24の変奏から成っており、叙情あふれる第18変奏は映画やCMなどでも使われる大ヒット曲となりました。狂詩曲全体がバレエ化された折、ラフマニノフは振付師フォーキンに次のようなアイディアを伝えています。「芸術における完璧性と女性とを求めて魂を悪魔に売り渡したパガニーニ・・・・・・ 真ん中の11から18までの変奏曲は愛のエピソードです」

    【解説】2021年6月ウィーンにて 平野玲音 (チェリスト)
    http://reine-h.com(平野玲音ファンクラブ公式サイト)

    録音:1941年12月24日

  15. ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 Op.18 第2楽章アダージョ・ソステヌート *

    1897年に《交響曲第1番》が酷評された後、私生活における問題も相まって、ラフマニノフはほぼ作曲不能の状態に。深く意気消沈し、感情喪失状態にすら陥りますが、ダーリ博士の催眠療法によって立ち直り、1901年に記念碑的な傑作《ピアノ協奏曲第2番》を書き上げます。第2楽章アダージョ・ソステヌートは、20代にして悟りを開いてしまったかのような、瞑想的な清らかさに満ちています。いわれのないペンの暴力に対し、音楽は直に反撃する力をもちません。けれども、ラフマニノフが長い苦しみの末に生み出した優しい調べは、言葉をはるかに超える強さで私たちの心に響きます。

    【解説】2021年6月ウィーンにて 平野玲音 (チェリスト)
    http://reine-h.com(平野玲音ファンクラブ公式サイト)

    録音:1929年4月10&13日



セルゲイ・ラフマニノフ プロフィール/略歴

セルゲイ・ラフマニノフ (1873-1943)はロシアに 生まれた作曲家・ピアニ スト・指揮者。モスクワ音楽院に学び、18歳でピアノ科、19歳で作曲科を卒業。その直後に発表した〈前奏曲〉嬰ハ短調は絶大な人気を博し、1901年に《ピアノ協奏曲第2番 》を完成して確かな名声を確立します。1904年からボリショイ劇場の指揮者を務め、自作のオペラ2曲を初演。1909年にはアメリカで《ピアノ協奏曲第3番》を披露するなど、多方面でキャリアを重ねます。

帰国後はモスクワを中心に活動しますが、1917年にロシア革命の混乱を避けて亡命、これが祖国との永(なが)の別れになってしまいます。アメリカに定住すると、スター・ピアニストとして自作にとどまらない幅広いレパートリーを弾くようになり、クライスラーのヴァイオリン小品をピアノ用に編曲したりもしています。《パガニーニの主題による狂詩曲》(1934年)は、この多忙な後半生に書かれた数少ない大作の一つです。

ロマンティックなメロディーで世界を席巻しながらも、前衛に背を向けたラフマニノフの作風は、しばしば辛辣な批判を浴びました。どんな時も、自分に正直に---。そこで挫けてしまわずに、心の音を奏で続けたからこそ、彼の作品は時代を超えて深い感動を呼ぶのでしょう。ラフマニノフが活躍したのは、大作曲家が世界を代表する演奏家を兼ねた最後の時代でもありました。現代では残念ながら失われつつある、「生きた音楽」の濃密さ! 刻々と姿を変える万華鏡のような珠玉の録音群を、ごゆっくりとお楽しみください。

Rachmaninoff

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