ピアノ | フジコ・ヘミング/魂のカンパネラ~フジコ・ヘミングの軌跡 |
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商品名 | フジコ・ヘミング/魂のカンパネラ~フジコ・ヘミングの軌跡 |
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発売日 | 2011年04月27日 |
商品コード | MIVE-4095/6 |
JANコード | 4571117352734 |
定価(税込) | 3,300円 |
収録時間 | DISC-1:76分48秒 DISC-2:75分50秒 |
ビクターエンターテイメント盤とユニバーサルスタジオ盤の2枚組、レーベルを超えたベスト盤!
「リスト:ラ・カンパネラ」「ショパン:夜想曲」「ショパン:雨だれ」はじめ、独自の解釈による色彩豊かな演奏と音楽に対する熱い愛情が込められた感動の名曲集。
収録内容
19世紀最大のヴァイオリニストといわれた、パガニーニのヴァイオリン協奏曲第2番の終楽章「鐘のロンド」に基づいて書かれた作品。鐘の音を模した主題がかろやかにリズミカルに鳴り響き、独特の雰囲気を醸し出している。
【解説】伊熊よし子
LA CAMPANELLA (GRANDES ÉTUDES DE PAGANINI S.141-3) (F.LISZT)
リストがワイマールの宮廷楽長になった時期に書かれた作品で、サロン風のロマンティックな小品。第3番の「ため息」がもっとも有名で、繊細なアルペッジョに彩られ、左右の手が交差して旋律を浮き立たせていく。
【解説】伊熊よし子
UN SOSPIRO (3 ÉTUDES DE CONCERT S.144-3) (F.LISZT)
リストが自作の歌曲「愛し得る限り愛しなさい」をピアノ用に編曲したもので、1850年ころの作と考えられる。 夢見るような甘い旋律が全編を貫き、歌詞の持つロマンティックな内容がそのままピアノで表現されている。
【解説】伊熊よし子
LIEBESTRAUM NO.3 IN A FLAT MAJOR S.541-3 (F.LISZ)
夜想曲はアイルランドのピアニストで作曲家のフィールドが確立した楽曲で、ショパンによって完成された。このピアノのためのロマン的な曲は左手の和声的な伴奏に乗り、右手が装飾音に彩られた叙情的な旋律を奏でる。
【解説】伊熊よし子
NOCTURNE NO.1 IN B FLAT MINOR OP.9-1 (F.CHOPIN)
もっとも有名な夜想曲のひとつで、サロン的な甘さとロマンティシズムあふれる旋律が美しく、映画にも使われている。ロンド風の形式で書かれ、最後のカデンツァのあとは夢見るような弱音で終止する。
【解説】伊熊よし子
NOCTURNE NO.2 IN E FLAT MAJOR OP.9-2 (F.CHOPIN)
1875年には「アダージョ」として出版されたが、のちにブラームスによって「レント・コン・グラン・エスプレッショーネ(ゆっくり、非常に表情を持って)」と記入された。映画「戦場のピアニスト」に用いられ、一躍有名に。
【解説】伊熊よし子
NOCTURNE NO.20 IN C SHARP MINOR OP.POSTH (F.CHOPIN)
「24の前奏曲」の第3番。24曲はすべて異なった調で書かれ、各曲は5度循環で進む。多くはサンドと逃避行したマヨルカ島で作曲された。第3番は絶妙なペダルを駆使し、かろやかで流麗な演奏を目指した曲。
【解説】伊熊よし子
PRÉLUDE IN G MAJOR OP.28-3 (F.CHOPIN)
リストがハンガリーの民族舞曲チャルダーシュの形式に基づいて書いた狂詩曲のもっとも有名な曲。情熱的で急速なフリシュカと、哀愁を帯びたおだやかなラッサンからなるチャルダーシュがふんだんに盛り込まれている。
【解説】伊熊よし子
HUNGARIAN RHAPSODY NO.2 IN C SHARP MINOR S.244-2 (F.LISZT)
文字通り黒鍵のための練習曲で、ショパンの得意とする即興演奏からインスピレーションを受けて書かれたかろやかな曲。右手は黒鍵のみを弾き、左手は和音に支えられた旋律を弾く。シンプルな5音音階に基づいている。
【解説】伊熊よし子
ETUDE NO.5 IN G FLAT MAJOR "BLACK KEYS" OP.10-5 (F.CHOPIN)
シュトゥットガルトで革命軍の敗北とワルシャワ陥落の知らせを聞き、心の動揺、絶望、やりきれない怒りを込めた曲。ベートーヴェン的な強さと確固たる意志の表示を感じさせる。左手の異なる音型8種はレガートで演奏。
【解説】伊熊よし子
ETUDE IN C MINOR "REVOLUTIONARY" OP.10-12 (F.CHOPIN)
「木枯らし」の愛称で知られる第25番は、半音階的走句とアルペッジョ進行をもとにして、左右の声部がポリフォニックな対話を繰り広げる。革命的な情熱に彩られ、ピアノ音楽ならではの音の豊かさを醸し出している。
【解説】伊熊よし子
ETUDE IN A MINOR "WINTER WIND" OP.25-11 (F.CHOPIN)
ハンガリーのヴァイオリニスト、レメーニと演奏旅行に出かけたブラームスはハンガリーのロマや農民の音楽を教えられ、それを書きとめてピアノ連弾用に編曲した。第5番は特に有名で、速度が自在に変化するのが特徴。
【解説】伊熊よし子
HUNGARIAN DANCE NO.5 IN F SHARP MINOR (J.BRAHMS)
ベルガマスクとはイタリアのベルガモ地方の舞曲「ベルガマスカ」に由来するといわれ、またヴェルレーヌの詩集「雅びた宴」の「18世紀の宮廷的」から発想を得たとも考えられる。月の光が水面に輝く光景を描いた名曲。
【解説】伊熊よし子
CLAIR DE LUNE "DE SUITE BERGAMASQUE" (C.DEBUSSY)
「エオリアのハープ」「羊飼いの笛」と呼ばれ、エオリアはシューマンのことば、羊飼いはショパンが弟子に語ったことばに由来する。牧童が暴風雨を避けて洞窟に避難し、静かに笛を吹き優雅な旋律を奏でているという内容。
【解説】伊熊よし子
ETUDE NO.1 IN A FLAT MAJOR "AEOLIAN HARP" OP.25-1 (F.CHOPIN)
練習曲はふつう指の練習のためだが、ショパンの練習曲はメロディ、リズム、ハーモニーなどすべての面で立派な楽曲としての地位を確立。第7番は主旋律を左手の低声部が担い、右手は伴奏和音を奏でるエレジー風の曲。
【解説】伊熊よし子
ETUDE NO.7 IN C SHARP MINOR OP.25-7 (F.CHOPIN)
第4楽章にシューベルトの歌曲「鱒」による変奏曲を持つ。渓流の清らかな流れのなかを泳ぐ鱒を女に見立て、それが釣り上げられてしまう悲哀を歌っている。主題と5つの変奏とコーダで構成、いずれも若々しく新鮮。
【解説】伊熊よし子
PIANO QUINTET IN A MAJOR, OP.114, D667, "THE TROUT"-4TH MOV.
THEME AND VARIATIONS: ANDANTINO (F.SCHUBERT) WITH ARTIS QUARTET OF VIENNA & JOSEF NIEDERHAMMER(CB)
「別れの曲」は主題が非常に美しく、減7の和音が随所で効果的に使われている。特に中間部での連続使用は、リストに大きな影響を与えた。ショパンが祖国ポーランドへの告別の情を込めた作品ともいわれている。
【解説】伊熊よし子
ETUDE NO.3 IN E MAJOR "CHANSON DE L'ADIEU OP.10-3 (F.CHOPIN)
円熟期の傑作で、サンドの別荘ノアンで書かれた。3部形式をとり、16小節にもおよぶ長い序奏の後、力強い主題が現れる。愛国心を感じさせるポロネーズの刻みが曲に勢いを与え、勇壮にして果敢、輝かしい曲想を持つ。
【解説】伊熊よし子
POLONAISE NO.6 IN A FLAT MAJOR, OP.53 "HÉROÏQUE" (F.CHOPIN)
ショパンのワルツ全19曲のなかでも、とりわけ人気の高い曲。サンドが飼っていた小犬が自分のしっぼを追いかけてぐるぐる回っている姿を描いたもので、簡潔な3部形式からなる。素朴で明快で洗練された曲想を持つ。
【解説】伊熊よし子
VALSE NO.6 IN D FLAT MAJOR, OP.64-1 (F.CHOPIN)
シューマンのピアノ曲集「子供の情景」の第7曲で、「夢見ごと」を意味している。子供のころに夢見た憧れの気持ちが曲全体に込められ、大人が自分の子供のころを思い出して弾くためのものとして作られている。
【解説】伊熊よし子
TRÄUMEREI (KINDERSZENEN, OP.15-7) (R.SCHUMANN)
ベートーヴェンのもっともポピュラーな名曲。技術的にあまり難しくなく愛らしい旋律を持つため、多くの人に愛奏される。エリーゼとは、作曲者をめぐる女性のひとりテレーゼ・マルファッティのことと考えられている。
【解説】伊熊よし子
FÜR ELISE IN A MINOR, WoO59 (L.V.BEETHOVEN)
「アテネの廃墟」はハンガリーのペスト市 (現在のブダペスト)の新ドイツ劇場開設のために書かれた劇音楽で、コッツェブーの戯曲に曲がつけられた。序曲を含めた全9曲のうち「トルコ行進曲」が特に親しまれ、バスがトルコ軍楽隊の太鼓の音を模している。
【解説】伊熊よし子
TURKISH MARCH (FROM "THE RUINS OF ATHENS") (ARR. A.RUBINSTEIN) (L.V.BEETHOVEN)
「24の前奏曲」は形式を異とする楽曲の集合体。各曲は短い楽想により、ショパンの感情の赴くままに自由に発展。これはマヨルカ島の僧院でショパンは夢と現実の境がなくなり、屋根に落ちる雫を独自の創造力で歌に変えた。
【解説】伊熊よし子
PRELUDE NO.15 IN D FLAT MAJOR, OP.28-15 (F.CHOPIN)
マリア・ヴォジンスカとの愛が始まったころの作で、ショパンはすでにパリの上流社会では作曲家として、演奏家として名声を確立していた。この曲のリズムの異なる左手と右手の交差が幻想的な雰囲気を醸し出す。
【解説】伊熊よし子
IMPROMPTU NO.4 IN C SHARP MINOR, OP.66 "FANTAISIE-IMPROMPTU" (F.CHOPIN)
第5番もよく演奏される名曲。8小節のおだやかな基本主題が幾度か反復再現されていき、そのつど神秘的な表情や優美さ、やすらぎなどを生み出してショパンならではのセンスを堪能させる。5連符の使用が印象的だ。
【解説】伊熊よし子
NOCTURNE NO.5 IN F SHARP MAJOR, OP.15-2 (F.CHOPIN)
甘美なメロディと詩的なハーモニーを持ち、広く愛されている。2つの主題が3回繰り返して登場し、3度と6度の重音などで精巧に装飾されていく。魅惑的な主題、精緻な装飾音、美しいコーダが洗練の極みを示す。
【解説】伊熊よし子
NOCTURNE NO.8 IN D FLAT MAJOR, OP.27-2 (F.CHOPIN)
パリ音楽院時代のときの作品で、16世紀初頭のパヴァーヌを主題に用いている。原曲はピアノ曲で、のちに小管弦楽用に編曲。ピアノ版は親友のビニェスによって初演された。優雅で気品に満ちた趣と新鮮な和音が特徴。
【解説】伊熊よし子
PAVANE POUR UNE INFANTE DÉFUNTE (M.RAVEL)
曲集の素材はあらゆるところからとられ、これはリールの詩集「スコットランドの歌」の同名の詩を題材とする。「できる限り静かにやさしい表情で」と指示されているように、透明感を持ったやわらかなタッチで演奏される。
【解説】伊熊よし子
LA FILLE AUX CHEVEUX DE LIN (PRÉLUDE 1ER LIVRE) (C.DEBUSSY)
1909年から翌年にかけて作曲された「前奏曲集」第1巻の第10曲。人々の不信仰のために海中に沈んだ大寺院が見せしめのために晴れた朝に姿を現すという、ブルターニュ地方の伝説に基づく。スケールの大きな曲である。
【解説】伊熊よし子
LA CATHÉDRALE ENGLOUTIE (PRÉLUDE 1ER LIVRE) (C.DEBUSSY)
第6番も非常に有名な曲で、のちに管弦楽用に編曲されている。序奏に次いですぐにプレストに移り、続いて荘重なラッサンが登場する。カデンツァを経てアレグロに入り、次第にクライマックスへと突入していく。
【解説】伊熊よし子
HUNGARIAN RHAPSODY NO.6 IN D FLAT MAJOR, S.244-6 (F.LISZT)
すでに体調が悪化していた時期の晩年の作だが、明るさにあふれ、晴れやかな喜びに満ちたワルツで、めまぐるしい転調が特徴となっている。調性は多様性を備え、主部が再現された後は、短いコーダで締めくくられる。
【解説】伊熊よし子
VALSE NO.8 IN A FLAT MAJOR, OP.64-3 (F.CHOPIN)
マリア・ヴォジンスカのために書かれた美しい曲で、ショパンの恋心が胸に迫る。ショパンはマリアとの別れに際してこの曲を贈った。彼女はこれを「別れのワルツ」と呼び、ショパンとの思い出をなつかしんだという。
【解説】伊熊よし子
VALSE NO.9 IN A FLAT MAJOR, OP.69-1 "L'ADIEU" (F.CHOPIN)
ピアノとオーケストラのための作品で、パガニーニの「無伴奏ヴァイオリンのためのカプリース第24番」の主題が用いられている。第18変奏は心に染み入るアンダンテ・カンタービレで、最初はピアノ独奏が行われる。
【解説】伊熊よし子
RHAPSODY ON A THEME BY PAGANINI, OP.43 VAR.18 (S.RACHMANINOV)
With Super World Orchestra Conducted By Alastair Willis
音楽ジャーナリスト 伊熊よし子
フジコ・ヘミングの音楽には、彼女の人生そのものが色濃く映し出されている。リストの「ラ・カンパネラ」の冒頭の遠くから聴こえてくるような鐘の音を模した響き、「愛の夢」の子供時代を思い出させるような、なつかしいロマンあふれる音色。みな、これまで耳にしたリストとは何かが違う。
フジコの名は、1999年2月に放映されたNHKのドキュメント番組で一躍知られるところとなった。彼女はそのなかでリストを弾き、これまでの歩みについて赤裸々に語っている。インタビューでもその語りはストレートだ。
「私は国籍の問題で留学が遅れ、30歳になってからベルリンに行ったの。当時は音に輝きがあるといわれたけど、さまざまな妨害に遭い、ウィーンに逃げた。そしてバーンスタインに認められたけど、演奏会直前に風邪をこじらせて聴覚を失ってしまい、キャリアが築けなかったの。その後は貧困生活を送ったけど、ピアノをやめようとは思わなかった。いつも土壇場になると神が微笑んでくれるの」
フジコの両親はロシア系スウェーデン人画家で建築家のジョスタ・ジョルジ・ヘミングと、東京音楽学校(現・東京芸術大学)出身でベルリンに留学していたピアニスト、大月投網子。第2次世界大戦前夜、ベルリンで生まれ、5歳で日本に帰国した。しかし、戦争の気配が濃厚で外国人排斥の傾向が強かった当時の日本は父親にとって住みやすいところではなく、彼はひとりで帰国。フジコは5歳から母親に就いてピアノを学ぶことになる。
「とてつもないスパルタ教育だった。毎日怒鳴られっぱなしで、うまく弾けないとバカだバカだといわれた。だから私は現実から逃避し、夢の世界に逃げるようになったの」
だが、厳しいレッスンが功を奏し、ピアノはまたたくまに上達。東京音楽学校へと進み、コンクール入賞などを経て留学した。その後、1995年に母親の死をきっかけに帰国。そしてテレビ出演が契機となりステージに登場、大ブレイクを巻き起こすことになる。
「昔から、いつも自分がステージで演奏している姿を夢見ていたの。最初はまったく聴こえなかったけど、現在は左耳が40パーセント回復している。一時はもう二度と人前で演奏することはできないと思っていたのに、神様が救ってくれた。私の演奏をケチつける人も多いけど、そんなのは平気。心のきれいな人はみんなほめてくれるから。私の演奏を聴いて、自殺を思い留まったとか、病気に打ち勝つ勇気を与えられたとか、いろんな手紙がくるの。そういう人たちに聴いてもらえばいい」
フジコの話し方は、初めて会った人を惹きつける。率直で自由で常に本音をぶつける。気どりや気負いはまったく見られない。あくまでも自分が感じたままをことばに託す。
演奏も同様、聴き手の心の奥深いところにゆっくりと浸透し、深い感動を呼び覚ます。彼女はヨーロッパ時代、「ショパンを弾くために生まれてきた」と称賛され、ドビュッシーは「淡い色彩がすばらしい」といわれ、ラヴェルも評判が高かった。それらを長年じっくりと弾き続け、愛奏曲として大切にしている。「ショパンはとてもこまやかなものを要求されるから難しい。リストのほうが派手で難しそうに聴こえるけど大雑把なのね。ショパンは刺繍をするようなこまかい神経が必要。私はできることならベルリンではなく、パリに留学したかったと思うほどフランスが好きなの。感性が合うのね。ドビュッシーもラヴェルもこんなに美しい音楽があるのかと思うくらい魅了され、いまでも感激している」
いまフジコは長年の夢であったヨーロッパやアメリカ公演を成功させ、パリと京都にも居を構え、愛するピアノと猫とともに徹底したベジタリアンの生活を送っている。
「私のピアノはその日の体調や気分で毎日違う。ピアノは人間が弾くものだから当然でしょ。機械じゃないんだからさ。自分の弾きたいように弾くわ。昔からそうしてきたもの」