ピアノフジコ・ヘミング/魂の響き~フジコ・ヘミングの世界~
フジコ・ヘミング/魂の響き~フジコ・ヘミングの世界~
商品名 フジコ・ヘミング/魂の響き~フジコ・ヘミングの世界~
発売日 2023年02月22日
商品コード MIVE-4277
JANコード 4571117356237
定価(税込) 1,980円
収録時間 78分57秒

「ラ・カンパネラ」「葬送曲」をはじめ、「月の光」「版画」などのクラシック名曲をフジコならではの色彩豊かな演奏でお届けします。フジコ・ヘミングがクラシックの世界に誘う名曲集♪

1999年2月11日にNHKのドキュメント番組『ETV特集』「フジコ〜あるピアニストの軌跡〜」が放映されて大きな反響を呼び、フジコブームが起こった。その後、発売されたデビューCD『奇蹟のカンパネラ』は、発売後3ヶ月で30万枚のセールスを記録し、日本のクラシック界では異例の大ヒットとなった。第14回日本ゴールドディスク大賞の「クラシック・アルバム・オブ・ザ・イヤー」他各賞を受賞した。


楽曲解説付

収録内容


  1. 月の光(「ベルガマスク組曲」より) (ドビュッシー)

    クロード・ドビュッシー (1862-1918) は20代の初めにフランスの作曲家の登竜門で あるローマ大賞を受賞し、その特典として官費でローマへ留学しました。 滞在中には北イタリアのベルガモ地方を旅していますが、そのときの印象をもととして書かれたとされるのが4曲からなるピアノ曲集 「ベルガマスク組曲」です。 繊細な月光に照らし出される木々の葉のきらめきが目に浮かぶかのような美しい曲〈月の光〉はその第3曲です。

    【解説】2022年12月 はぎやゆきこ

  2. 即興曲 変ト長調 Op.90-3(D.899-3) (シューベルト)

    即興曲というのは即興演奏のような気ままな筆致で書かれた小品の名称で、19世紀のロマン派ピアノ音楽の重要な曲種の一つでした。フランツ・ペーター・シュー ベルト (1797-1828) が亡くなる前年に書いた8曲の即興曲はその代表的な作品です。8 曲は作品90と作品142に4曲ずつ収められています。これは作品90の第3曲で、泉の湧きだすような美しい調べがピアノの中音域で奏でられます。

    【解説】2022年12月 はぎやゆきこ

  3. ハンガリー舞曲 第5番 嬰ヘ短調 (ブラームス)

    ヨハネス・ブラームス (1833-1897) は20歳のときハンガリー出身のヴァイオリニストの伴奏者として各地を演奏旅行して回り、旅行中に聴き覚えたハンガリーの旋律を元として後に21曲からなる 「ハンガリー舞曲集」を編作しました。これらは最初、当時の家庭音楽の花形曲種であるピアノ連弾譜として出版され、のちにオーケストラ版にも編曲されました。この有名な第5番はまず急テンポで民族色の濃厚な旋律が開始されますが、途中でテンポが劇的に変化します。

    【解説】2022年12月 はぎやゆきこ

  4. ため息(「3つの演奏会用練習曲」より) S.144-3 (リスト)

    若い頃、花形ピアニストとして華やかなステージ生活を送ったフランツ・リスト(1811-1886) は1847年9月の演奏会を最後にコンサートから引退し、後半生は作曲と教授活動に力を注ぎました。この曲はそうした生活の中で書かれた「3つの演奏会用エチュード」の第3曲で、幅広い分散和音を縫って左右の手で交互に奏される主題旋律が規則正しく休符を挟んだものであるため、それが切れ切れのため息を連想させるところから出版時にこの愛称がつけられました。

    【解説】2022年12月 はぎやゆきこ

  5. 愛の夢 第3番 変イ長調 S.541-3 (リスト)

    リストのピアノ小品の中でも屈指の人気作であるこの曲は、「愛の夢-3つのノク ターン」のタイトルで1850年に発表されたピアノ小品集の第3曲です。友人ショパンのノクターンに啓発されたらしく、タイトルに「ノクターン」の副題があります。3曲とも彼自身の愛をテーマとする歌曲を原曲としていて、この第3番のもととなった歌曲の原詩はドイツ・ロマン派の詩人フライリヒラートの「愛の時は短いから、愛し得る限り愛せよ」という一篇です。分散和音伴奏にのせて夢見るような調べが奏されます。

    【解説】2022年12月 はぎやゆきこ

  6. ハンガリー狂詩曲 第2番 嬰ハ短調 S.244-2 (リスト)

    ハンガリーのライディングという村に生まれたリストは、10歳のときウィーンへ音楽修業に旅立ち、 その後ヨーロッパ各国で活躍しましたが、生涯祖国への熱い思いを抱き続けました。全盛期の祖国訪問時に採譜したロマ (ジプシー) の旋律をもととして書かれたのが19曲の「ハンガリー狂詩曲」です。ことに有名なこの第2番はハンガリーの代表的な民族舞曲チャールダッシュのスタイルによるもので、荘重な序奏、ラッサンというテンポの遅い部分、フリシュカという急速な部分から構成され ています。

    【解説】2022年12月 はぎやゆきこ

  7. ラ・カンパネラ(パガニーニによる大練習曲) S.141-3 (リスト)

    イタリアの超人的ヴァイオリニスト、ニコロ・パガニーニ (1782-1840) の超絶技巧演奏に触発されたリストはヴァイオリンの技巧をピアノに置き換えた「パガニーニによる大練習曲集」を長年かけて完成させました。「ラ・カンパネラ」はその第3曲で、原曲はパガニーニのヴァイオリン協奏曲第2番の終楽章です。「鐘」というタイトルのようにピアノの高音部で華麗な鐘の音の模倣が繰り広げられます。1999年6月にビクター・スタジオで録音され同年8月にリリースされたフジコさんのデビュー盤「奇蹟のカンパネラ」に収録された彼女の原点のような演奏がここに蘇りました。

    【解説】2022年12月 はぎやゆきこ

  8. 葬送曲(「詩的で宗教的な調べ」より) S.173-7 (リスト) (*ライヴ録音)

    フランツ・リストが1840年代から手掛け1852年に完成させた10曲構成の随想曲集「詩的にして宗教的な調べ」の第7曲です。曲集はフランスの詩人ラマルティーヌ (1790-1869)の詩から霊感を得て作曲されていますが、この「葬送曲」は1849年10月に書かれていることから、同月17日に亡くなった友人フレデリック・ショパンへの追悼曲であるとも考えられています。あるいは、祖国ハンガリーで、オーストリア政府への抵抗運動に加わって処刑された旧知の貴族たちを悼んだものであるともいわれています。

    【解説】2022年12月 はぎやゆきこ

  9. エチュード 第1番 変イ長調「エオリアン・ハープ」Op.25-1 (ショパン)

    ポーランドに生まれ後半生をフランスで送ったフレデリック・フランソワ・ショパン(1810-1849) には、それぞれ12曲からなる作品10と作品25の2集の練習曲集があります。「エオリアン・ハープ」は1837年に出版された作品25の第1曲で、両手が左右対称形で奏でる分散和音の中から牧歌的旋律が浮かび上がります。それがまるで、風を受けて奏者なしで鳴るというギリシャ神話の伝説のハープ、エオリアン・ハー プを思わせることからこの愛称があります。

    【解説】2022年12月 はぎやゆきこ

  10. エチュード ハ短調 「革命」 Op.10-12 (ショパン)

    作品10の最終作です。鍵盤上を高速で上下行する左手楽句を基調として、右手がオクターヴで激情的な旋律を奏します。1831年9月、ウィーンからパリへ移る途中のシュトゥットガルトで、ロシア軍がワルシャワに侵攻したとの報に接したショパンはポーランドにいる家族や友人の安否を気遣って焦燥感を募らせ、祖国を蹂躙する者への悲憤をこめてこの曲を書いたといわれています。

    【解説】2022年12月 はぎやゆきこ

  11. ノクターン 第20番 嬰ハ短調 遺作 (ショパン)

    切なく美しいこのノクターンはショパンがウィーンから家族に宛てた手紙に「姉さんが、僕のピアノ協奏曲第2番を弾くときの指慣らし用に」という言葉とともに記した小品です。マズルカ風の中間部には協奏曲第2番からの引用が含まれています。

    【解説】2022年12月 はぎやゆきこ

  12. エチュード 第3番 ホ長調 「別れの曲」 Op.10-3 (ショパン) (*ライヴ録音)

    ショパン自身が「このような美しい曲をこれまでに書いたことがない」と語ったこの曲は1833年出版の作品10の第3曲です。1935年に日本公開されたショパンの伝記映画「別れの曲」のテーマ曲に使われたことからこの愛称が定着しました。

    【解説】2022年12月 はぎやゆきこ

  13. 予言の鳥(森の情景)Op.82-7 (シューマン) (*ライヴ録音)
    版画 (ドビュッシー)

    ドイツ・ロマン派の文学者たちはしばしば「森」に材をとった作品を書きました。文学青年だったロベルト・シューマン (1810-1856) も1848年末から翌年にかけて森をテーマとする9曲からなるピアノ小品集「森の情景」を作曲しています。これはその 第7曲で、不思議な響きの主題から神秘的に開始されます。
    版画(ドビュッシー)
    1903年に出版された3曲からなるピアノ曲集「版画」はクロード・ドビュッシー (1862-1918) の新境地を開くピアノ曲となりました。

    【解説】2022年12月 はぎやゆきこ

  14. Ⅰ.パゴダ(塔)

    パゴタとは東洋の塔のことです。1889年のパリ万国博覧会を訪れたドビュッシー は会場でジャワのガムラン音楽に接して強い印象を受けました。この曲はそれが契機となって書かれたといわれます。

    【解説】2022年12月 はぎやゆきこ

  15. Ⅱ.グラナダの夕べ

    スペイン南部アンダルシア地方の古都グラナダに材をとった第2曲「グラナダのタベ」は、キューバに発祥してスペインに伝わった舞曲ハバネラのリズムを基調としています。ギターを模した音型やムーア人の歌などを採り入れながら古都の夕べの情景が印象深く映し出されます。

    【解説】2022年12月 はぎやゆきこ

  16. Ⅲ.雨の庭

    フランスの2つの童謡「ねんねよ、坊やよ」と「わたしたちはもう森には行かない」から借用した主題によるこの曲は4つの部分からできています。第1部では雨を思わせる分散和音がデリケートな雰囲気を醸します。第2部では雨が小止みになったかのように明るい雰囲気となります。そして、第3部では雨のさまざまな表情を描き出し、第4部では光が射すかのような曲想となって全曲を結びます。

    【解説】2022年12月 はぎやゆきこ

※ *印=8・12・13曲目は「ライヴ録音」音源での収録です。

フジコ・ヘミング/魂の響き~フジコ・ヘミングの世界~

音楽評論家 萩谷由喜子

■帰国から28年、あらためてフジコさんを聴く

第2次大戦前夜のベルリンでスウェーデン人画家兼建築家ジョスタ・ジョルジ・ヘミングを父とし、 日本人ピアニスト大月投網子を母として生まれたフジコさんは、5歳のときに一家で日本へ移りますが、やがて父は母の元を去りました。そんな中、フジコさんは母の手ほどきでピアノを始めてぐんぐんと腕を上げ、東京音楽学校から新制大学に移行したばかりの東京藝術大学音楽学部に学び、卒業 後、ヨーロッパ留学を希望します。しかし、外国人を父とする彼女は無国籍状態であったためその希望が叶わず、やむなく難民扱いで出国して渡独、ベルリン音楽大学に学びました。そして、著名指揮者に認められて演奏会に出演する話が決まるのですが、 悲運にも聴力トラブルに見舞われ、大切な演奏会出演を断念しなければなりませんでした。それからも多くの困難に直面したのち、スウェーデンに移ってようやく国籍を回復し、同国で長年、地味なピアノ教師として過ごしました。彼女が母親の死をきっかけに日本に帰国したのは60代になっていた1995年のことでした。
当初は小さな自主リサイタルや病院ロビーでの慰問コンサートなどの地道な活動を続けていまが、1999年2月にNHK-ETV特集『フジ子~あるピアニストの軌跡』が放映されてその苦難の半生が紹介されると俄然大反響を呼び、生命力に満ちたピアノと飾り気のない人柄に多くの音楽ファンの共感が寄せられて、人気ピアニストの仲間入りを果たしたのです。それから早くも四半世紀近い歳月が流れましたが、この間、彼女は全国規模で膨大数のコンサートに出演するとともに、多くのCDをリリースして、そのスケールの大きな音楽で人々を魅了してきました。
このアルバムは、彼女がこれまでにビクターエンタテインメントからリリースした3集のベストセラー・アルバム、『哀愁のノクターン』『奇跡のカンパネラ 』『永久への響き』の中からことに記念碑的名演を収めたハイライト盤です。国籍問題、聴力トラブルなどを克服しながら長年外国で無名に甘んじ、60 代から日本で奇跡の大輪を咲かせたフジコ・ヘミング。このアルバムは、フジコさんという稀有なピアニストの本質に迫る貴重な一枚となっています。

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