ピアノメロディアス・ピアノ~エリーゼのために
メロディアス・ピアノ~エリーゼのために
商品名 メロディアス・ピアノ~エリーゼのために
発売日 2024年04月10日
商品コード MIVE-4300
JANコード 4571117356640
定価(税込) 2,200円
収録時間 70分26秒

耳なじみのあるピアノ名曲をフジコ・ヘミング、辻󠄀井伸行をはじめ、美しい演奏でお届けします♪


楽曲解説・アーティスト解説付

収録内容


このアルバムについて

 「次は誰が弾く番かな?」。5歳のシュンくんは私の呼びかけに手を挙げながらピアノに近づいてきます。私と一緒にピアノの前に座り、少し緊張した面持ちで右手の人差し指で鍵盤をひとつずつ丁寧に押していきます。それはまるで愛おしい何かにそっと触 れているかのようです。私はその音に合わせ、即興的に音楽を創っていきます。言語活動が活発ではない知的障がいを持つシュンくんにとって、そのピアノの音は彼の声であり、心の叫びでもあります。
 楽器の王様「ピアノ」。音域がどの楽器よりも広く、一度に鳴らせる音も多い、「1台で オーケストラ」と言われる魅力的な楽器です。ピアノほど小さな子どもから大人まで愛好家が多い楽器は他にありません。
 私自身幼い頃からピアノを習いはじめ、自分のピアノが自宅に届いた日、母が縫ってくれたレッスンバッグを持って初めて先生のお宅にうかがった日、初めて発表会でピアノを弾いた日、大学でピアノと向き合った日々、そしてピアノの生徒たちとの日々など、私にとってピアノは人生と切り離すことができない大切な体験を産み出してくれました。
 大学時代、 音楽療法を学び始め担当教員から出された課題は「通常の弾き方ではなく自分だけのピアノの音を見つける」「ピアノで即興的に音楽を創る」というものでした。ソロ演奏にしろ、伴奏にしろ、作曲家が書いた楽譜を読み込み、それを再現することに力を注いできた私にとっては目から鱗のような、ある意味、苦行のような日々が続きました。しかしそれが苦行ではなく、喜びに変わった時、音楽療法士としてのトレーニングも終了の時を迎えていたのです。
 現在私は乳幼児と母親との音楽活動を支援していますが、0歳児と一緒にピアノを弾くこともあります。子どもたちは音が出ること自体が面白いらしく、小さな手をパーにしたり、グーにしたりして鍵盤を叩き、思いのままに音で遊びます。お母さんは膝の上の子どもたちに合わせて自由に音を鳴らし、私は即興的に音楽を創っていきます。
 知的障がいをもつ6歳のリンちゃんはピアノが大好きで、部屋に入ってくると必ずピアノに近づきます。私が彼女の好きなディズニーの曲を弾くと、まるで鏡の前で踊るバレエダンサーのようにピアノに自分の姿を映して踊ります。私たち大人には真似のできない、子どもの視点ならではのピアノの楽しみ方です。
 中学生のヒロミくんは自閉症スペクトラム症でこだわりが強く、グランドピアノの内部構造に興味を持っています。私がダンパーペダルを踏み、腕全体を使ってできるだけ多くの鍵盤を音がでないようにそっと押し込むと、ヒロミくんはピアノの中に頭を突っ込み、ビアノ線に向かって「あー」と声を出します。そこではエコーが複雑に響き合う特別な空間が広がります。また子どもたちがグランドピアノの側板や前框などの木の部分を手で叩きはじめたら、打楽器のリズムとして捉えなおし、そのリズムに合う曲を弾き語りすることもあります。それが子どもたちにとって音楽への入口となります。
 子どもたちがピアノの可能性を見つけ出すと、例えば現代音楽のようにピアノ線をマレットで叩きだしたりすることもあります。私たち音楽療法士にとってピアノの魅力は「1台でオーケストラ」に加えて、この楽器の持つ多様な可能性と言えるでしょう。
 このCDを聴いていると心がゆったりと落ち着いてきます。私も実際に収録曲のいくつかをリラクゼーションタイムで使ったことがあります。私たちが日常的に抱えるストレスは多くの場合、対人関係の中から生まれてきます。
 音楽療法士は常に他者と関わっており、セルフケアがとても大切です。音楽療法セッションでのピアノ曲を聴くリラクゼーションタイムはクライエントだけでなく、療法士にとっても心を落ち着かせて自分自身の心の声を聴くための大切な時間です。
 そしてこのCDに収録されている心が静かに波立つ演奏から感じたのは、世界の第一線で活躍するピアニストの演奏は、私たち音楽療法士が探究しているピアノのもつ多様な可能性を無意識のうちに感じ取っているということでした。私たちが想像できないほど深く長くピアノと向き合っているピアニストの方々はピアノに内在する、これまで表には出てきていなかった力をご存じなのではないでしょうか。
 このCDを手に取られた皆さまも静寂でありながら生命感あふれる演奏をお聴きになり、ピアノの多様な可能性を感じ取っていただければ幸いです。

音楽療法士 井上勢津


  1. ノクターン第2番(ショパン)フジコ・ヘミング

    ショパンのノクターン第2番は、ロマンティックなピアノ曲で、優美で感傷的な旋律が特徴で、優れたメロディと洗練されたハーモニーが、聴く者の心に深い感動を与えてくれます。穏やかな雰囲気と流れるような旋律が心地よいこの作品は、ピアノの音色の中に聴こえる細なペダルの音が弾き手の呼吸を感じさせ、ショパンのスタイルとロマンティシズムの精髄を味わえる素晴らしい曲の一つでもあります。

  2. 愛の夢 第3番(リスト)フジコ・ヘミング

    優雅なアルペジオと美しい和声によって構成されるこの曲は、そのタイトルが表すように、ロマンティックな感情と情景が豊かに表現されるピアノ曲です。冒頭では静かな美しい旋律が聴かれ、次第に情熱的に盛り上がりクライマックスへ、そして静かな響きで幕を閉じる感動的で印象深い作品となっています。愛の情熱や複雑な感情が音楽を通じて表現され、聴く者に深い感銘を与えてくれる作品です。

  3. 春の歌(メンデルスゾーン)エヴァ・ボブウォツカ

    「春の歌」はピアノのみならず、ヴァイオリンやその他の独奏曲にも多く編曲されている、春の美しい風景を描いた魅力的な作品です。ピアノの音色が自然の生命力を表現し、繊細で運動感溢れる旋律がまるで花々が咲き誇り小川が流れる春の風景を思い浮かべさせ、優雅で明るいリズムが聴き手を楽しい気分に誘います。情感豊かな音色は春の訪れを感じさ音楽の魔法に触れるかのように感じさせます。

  4. 愛の挨拶(エルガー)仲道祐子&仲道郁代

    エルガーを代表するこの曲は、まだ彼が作曲家として駆け出しであったときに自らの婚約記念に婚約者キャロラインのために書き下ろした曲。その後エルガーが大成したのは、妻となったキャロラインがマネジャーとしての才覚を発揮し、献身的な支えがあったからといわれており、この曲があったからこそエルガーがイギリスを代表する作曲家として名を馳せることができたと思うと感慨深い。ヴァイオリンとピアノのための曲として聴くことが多いが、エルガー自身がピアノ独奏、管弦楽用の編曲も手掛けている。ここでは仲道デュオによる華麗な弾でお聞きいただきたい。

  5. エリーゼのために(ベートーヴェン)イエルク・デームス

    「エリーゼのために」はベートーヴェンの代表作であり、ピアノ初心者にも演奏されることが多 い、誰もが知る美しいピアノ曲です。簡潔で華麗な旋律が特徴で、耳に残りやすいメロディが心地よい印象を与えてくれます。エリーゼが誰なのかについては諸説あり解明されておらず、作曲の背後にあるストーリーは謎めいたままとされているが、その切ない旋律からベートーヴェン本人の叶わぬ恋のメロディーであったであろうことは伺える。

  6. 花の歌(ランゲ)仲道祐子

    作曲家のフェルディナント・ランゲはロマン派の音楽家であり、この曲もその優美な旋律や心地よい和声に特徴が感じられます。花の美しさや優雅さをイメージさせるメロディが聴き手に穏やかな感動をもたらすこの曲は、クラシック音楽の入門曲として花のイメージを楽しむ一曲と言えるでしょう。優雅で耳に残る旋律に耳を傾けてみましょう。

  7. ワルツ 変イ長調(ブラームス)イエルク・デームス

    この曲はブラームスによる“16のワルツ”の中の1曲で、変イ長調の明るい調子が特徴的で、優雅で軽やかなメロディが楽しいワルツの雰囲気を醸し出しています。ブラームスらしさを感じつつも簡潔な構造であるためピアノ初心者にも親しみやすく、発表会でも弾かれることの多い楽曲です。

  8. 華麗なる円舞曲(ショパン)辻井伸行

    「華麗なる円舞曲」と呼ばれるこの曲は、華やかで優雅なワルツで、美しい旋律と緻密なリズムが調和し、ピアノの響きを生かした魅力的な作品となっています。軽やかな舞曲の中にも感情豊かな表現が見られ、ショパン特有の繊細で情熱的な表現が感じられます。猫が鍵盤の上を走り回る様子に聴こえることから「猫のワルツ」と称されることもある。

    ※ライブ(ショパンコンクール音源)

  9. 四季「舟歌」(チャイコフスキー)三船優子

    チャイコフスキーの“四季”はロシアの風景を12か月にわたって描写したピアノ小品集で「舟歌」は6月の曲として知られています。穏やかな水面に映る景色や、優しいそよ風、漕ぐ小舟の揺れを感じさせるような繊細で優雅な旋律が特徴です。ピアノの柔らかい響きが自然の静さと調和して聴き手を穏やかな心地に誘います。

  10. 4つのマズルカ Op.24-4(ショパン)辻井伸行

    この曲は、ショパンの“四つのマズルカ”の中の一曲で、濃密で情熱的な表現が特徴です。深い哀愁と繊細なメロディが融合し、シンプルでありながらも感情の変化に富んだ構成で聴き手を引き込み、変ロ短調の暗い響きが作品に深みを与えています。ショパンのマズルカは民族舞踏のリズムやポーランドの音楽的伝統を反映しており、この作品もその流れを多分に汲んでいます。

    ※ライブ(ショパンコンクール音源)

  11. 春に寄す(グリーグ)エヴァ・ボブウォツカ

    グリーグは折々の着想をスケッチ風に「抒情小曲集」を10集に書き留めており、この「春に寄す」は第3集に納められている。美しいピアノ曲で春の明るい雰囲気を楽しませてくれます。グリーグはデンマークへ旅行した時にホームシックになり「厳しく野性的な美しさがあふれるノルウェーの自然が恋しくて仕方なく、それを讃える歌をつくってしまった。とくに目新しい作品ではないが、私の心からの率直な気持ちを託した。」と、友人フランツ・バイエルへ宛てた手 紙の中で記している。

  12. シチリアーノ(バッハ)エヴァ・ボブウォツカ

    バッハの「シチリアーノ」はその温かで静かな旋律が特徴の美しい楽曲です。通常はフルートやヴァイオリン、ハープシコードなどで演奏されますが、ピアノで演奏される際にもその美しい旋律が魅力的に表現されます。緻密なバッハの対位法が巧みに取り入れられ、その旋律とともにアルペジオが楽曲に新たな深みを与え安らかで感動的な雰囲気が生みだされています。バロック音楽の奥深さに触れる楽曲でもあります。

  13. ラ・カンパネラ(リスト)フジコ・ヘミング

    この曲は、パガニーニが作曲した「ヴァイオリン協奏曲 第2番」を基にリストが編曲したピアノ作品です。カンパネラはイタリア語で「鐘」を意味しており、鐘の音をイメージした独特の技巧と華やかな旋律が特徴です。高度な技巧が要求される一方で、優美で劇的な音楽が聴き手を引きつけます。瞬時に変わるリズムや幻想的な音楽の描写にピアノの限界に挑むリストの才能を垣間見ることができます。

  14. アラベスク第1番(ドビュッシー)仲道祐子

    「アラベスク」とは”アラビア風”という意味で西洋音楽の中にアラビアの要素が取り入れらた楽曲です。「アラベスク第1番」はドビュッシーによる印象主義音楽の代表作品の一つですが、その曲は、ロマン派の優雅な和声が多用され、その一方で、優雅な旋律は印象派のボビュッシーそのものであり、ピアノの鍵盤を通じて描かれる夢幻的な雰囲気は聴き手の心緒を風景の中に誘う、とても心地の良い気分にさせてくれます。

  15. トロイメライ(シューマン)三船優子

    「トロイメライ」はシューマンを代表するロマンティックなピアノ曲です。牧歌的でありながら豊かさを感じる曲想は聴くものを夢見ここちにさせてくれます。静かに始まる冒頭のフレーズから、空間に放たれるような広がりある旋律は、誰が聴いても心が洗われ、まさにピアノの魅力が詰まった楽曲といえるでしょう。シューマンの詩的な音楽言語は、聴き手に深い感動をもたらしてくれます。ゆったりとしたリズムや美しい旋律を感じながら心地よい余韻に浸ってください。

  16. ユーモレスク(ドビュッシー)三船優子

    誰もが聴いたことのある親しみある旋律。ドビュッシーの「ユーモレスク」はユーモア溢れる雰囲気が特徴で、軽やかで楽しい旋律が心地よく聴こえてきます。ドビュッシーらしい印象主義の要素が取り入れられ音楽的な遊び心がちりばめられており、聴き手を楽しい気持ちにさせてくれます。短い曲ですが、クラシック音楽を体験するにはぴったりです。軽快でユニークな音楽に触れながらピアノの魅力を感じ取ってみてください。

  17. 子守歌(ブラームス)イエルク・デームス

    ブラームスの「子守歌」は数ある「子守歌」の中でも最も良く知られている曲であり、様々な楽器の編曲で演奏されていますが、元は歌曲として出版されました。ブラームスは曲を友人の子供のために作曲したとされており、その母性溢れる美しいメロディと優雅な旋律が幻想的で心地よい、やすらぎの世界へ襲います。静かなひとときにこの子守歌の美しい響きを楽しんでください。

  18. 亜麻色の髪の乙女(ドビュッシー)ダン・タイ・ソン

    ドビュッシーが書いた「12の前奏曲集」は、優雅で繊細な旋律が印象的で、各曲が異なる風景を描写します。その曲集の第1巻8曲目にあたるこの曲は、詩人コント・ド・リールの「亜麻色の神の乙女」に影響された、特に人気がある曲であり、感動的なピアノの響きが豊かな表現力を楽しませてくれます。まさにドビュッシーが色彩を音楽で表したと言われるこの曲は、音色を通じて色彩豊かな世界に触れることができます。

  19. ワルツ 第7番(ショパン)ダン・タイ・ソン

    「ワルツ第7番」はショパンが生前出版した最後の作品であり、彼の作曲技術の集大成ともいわれています。優雅で軽やかな雰囲気が特徴で、繊細かつ美しい旋律が心地よく広がり、ショパン独特のロマンティックで感情豊かな表現が聴き手を引き込みます。同じ円舞曲の「華麗なる大円舞曲」とは相対的な、より気品に溢れ、聴き手を宮廷の舞踏会のような雰囲気に誘ってくれます。

  20. 別れの曲(ショパン)ダン・タイ・ソン

    優雅で悲しげな旋律が深い感情を与えるこの練習曲は、ショパンの独自の抒情性が光る1曲です。国によってその呼称が異なり、フランス語では「親密な」、英語では「別れ」、日本では「別れの曲」として知られている。ピアノの美しい音色が別れの切なさを表現し、荘厳な雰囲気が特徴で、聴き手に深い感動と余韻を残す美しい作品。ショパン自ら「一生のうち二度とこのような美しい旋律を見つけることはできないだろう」と語ったとも言われている。

フジコ・ヘミング (本名:ゲオルギー・ヘミング・イングリット・フジコ)
ベルリン生まれ東京育ち。5歳から母、投嗣子の手ほどきでピアノを始め、10歳からはレオ ニード・クロイツアー氏にも師事。「フジコはいまに世界中の人々を感激させるピアニストになるだろう」と絶賛された。東京芸大在学中から、毎日コンクール入賞など多数受賞。
25歳でドイツへ留学。ベルリン音楽学校を卒業後、レナード・バーンスタインをはじめとする世界的音楽家たちからの支援も受け、今世紀最大の作曲家・指揮者の一人、ブルーノ・マデルナの専属ピアニストとして契約したが、リサイタル直前に聴力を失うというアクシデ ントに見舞われる。1999年2月11日に、フジコの軌跡を描いたドキュメント番組、ETV特集「フジコ~あるピアニストの軌跡~」が放映され大反響を書き起こす。1999年8月25日発売ファーストCD「奇蹟のカンパネラ」(ビクター)はクラシック界異例の大ヒットを記録し、いまだにその記録を更新し続けている。2001年6月、ニューヨーク・カーネギーホールのリサイタルでは「マリア・カラス以来の大盛会」と絶賛された。世界で活動する著名オーケスト ラとの共演は枚挙にいとまがない。共演したミシャ・マイスキーは忘れ得ないピアニスト、マキシム・ヴェンゲーロフは“あなたの芸術を賞賛しまず”と形容している。


エヴァ・ボブウォツカ
ポーランド生まれのピアニスト、ダグニスクの音楽アカデミーを首席で卒業、その後、コンラード・ハンゼン、ルドルフ・ケーレル、タチアナ・ニコライエワ、マルタ・アルゲリッチらに師事した。1977年イタリアのヴィオッティ国際コンクールとボルドー国際コンクールに相次いで優勝、1980年にはショパン・コンクールに入賞した。欧州をはじめ、米国、カナダ、 韓国などで活発な演奏活動を行ない、世界のオーケストラとの共演も多い。バッハから現代音楽までとレパートリーは幅広い。世界各国での活動の中で、東京芸術大学の客員教授時代は多くの日本人ピアニストの育成にも関わるなどピアノ教育界においても大きな功績を残している。2005年、2015年、2021年ショパン国際コンクールの審査員を務めた。


仲道 祐子
金原美津子、安倍紀子、中島和彦の各氏に師事。アメリカにてシルヴィア・ミューリング氏に師事。その後、桐朋女子高等学校音楽科に進み、1986年渡独、クラウス・シルデ氏に師事。ミュンヘン国立音楽大学、同大学院ピアノ科及び室内楽科を卒業。ドイツのハンブルクを拠点にソロ活動を行う。コンクールでは、第36回全日本学生音楽コンクールピアノ部門中学校の部全国第1位。アドルフォ・L・アブレダ国際ピアノコンクール最高位第2位。第37回マリア・カナルス国際音楽コンクールピアノ部門第2位及び特別賞。第10回ローベル・カサドシュ国際ピアノコンクール第3位。 1996年5月、紀尾井ホールのデビュー・リサイタルで、日本での本格的ソロ活動を始める。リサイタルの他、クラシック・フィルハーモニー・ボンや読売日本交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団など国内外のオーケストラとの共演をはじめ、室内楽の分野でも活躍している。
仲道 郁代
デビュー以来35年以上にわたって常に高い人気を保ち続けている稀有な存在。日本では全国各地で延べ2500回を超えるリサイタルを実施してきた。十代の頃にアメリカ・ミシガン州に住み、またミュンヘンで学んだことが彼女の音楽観に深い影響を与えているが、細やかさや繊細さ、他者との深い共感性を同時に持ち合わせているところが、彼女のピアノの魅力の一つとなっている。 演奏活動の初期より一貫して社会的な活動にも関心を持ち続け、特に東日本大震災で被災した宮城県七ヶ浜町における子供達へのアウトリーチ活動は町との繋がりを深めて継続して行われており、NHK「おはよう日本」「ニュースウオッチ9」等でも取り上げられ反響を呼んだ。2018年には自身が代表となる一般社団法人音楽がヒラク未来を設立。これまでの活動が評価され、令和3年度文化庁長官表彰を受けた。 日本音楽コンクール第1位、ジュネーヴ国際音楽コンクール最高位、メンデルスゾーン・コンクール第1位メンデルスゾーン賞、エリザベート王妃国際音楽コンクール第5位他、受賞歴多数。


イエルク・デームス
オーストリア生まれ (1928-2019)。ブゾーニ国際コンクールで優勝をきっかけに、カラヤンや小澤征爾など巨匠の下でソリストとしての経験を積む一方で、室内楽や歌曲の伴奏者として、エリーザベト・シュヴァルツコップ、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ、ヨーゼフ・スーク等の伴奏者としても活躍した。 親日家でもあり、東日本大震災の影響で多くの演奏家が来日を取りやめる中、来日公演を敢行している。最後の来日は2018年11月28日の紀尾井ホールでのリサイタル。ウィーンの伝統と格式を重んじながらも、後進の個性を引き出すことに全身全霊をささげる熱き教育者でもあり、その人間性あふれる演奏は人々を温かく包み込む。音楽の素晴らしさを改めて知らしめてくれる演奏が印象的である。


辻井 伸行
1988年東京生まれ。幼少の頃よりピアノの才能に恵まれ、10歳でオーケストラと共演、2000年にはソロ・リサイタル・デビュー。05年には、ワルシャワで行われた「第15回 ショパン国際ピアノ・コンクール」に最年少で参加し、「批評家賞」を受賞した。2009年の「ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール」優勝後、現在に至るまで世界各国で圧倒的な成功を収めている。2013年にはイギリス最大の音楽祭「BBCプロムス」に出演し「歴史的成功」と称賛された。2019年はロンドンのインターナショナル・ピアノ・シリーズやカーネギーホール主催のピアノ・リサイタル・シリーズへ出演し驚異的な成功を収め、ゲルギエフ指揮マリインスキー劇場管弦楽団、ロビン・ティチアーティ指揮ベルリン・ドイツ交響楽団、ヴァシリー・ペトレンコ指揮ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団などの一流指揮者との共演や国内外でのツアーを行っている。 2009年、文化庁長官表彰 (国際芸術部門)。2010年、第11回ホテルオークラ音楽賞及び 第1回岩谷時子賞受賞。2013年、第39回日本ショパン協会賞受賞。


三舩 優子
幼少期をNYで過ごし、市原光子、ジェローム・ローエンタールに師事。帰国後、井口秋子、奥村洋子、安川加寿子に師事。桐朋学園大学在学中、第57回日本音楽コンクール第1位。同大学を首席卒業後、文化庁派遣研修員としてジュリアード音楽院へ留学、1991年にアメリカデビューを果たし、L.A. Timesにて絶賛、クラシックラジオ局WQXRにて全米放送、高評を得る。同年フリーナ・アワーバック国際ピアノコンクール優勝。ジュリアードソリストオーディションで優勝。帰国後は、多数のリサイタル、モスクワ交響楽団、パリ・ギャルド・ レピュブリケーヌ吹奏楽団等との日本ツアーをはじめ、内外数々の主要オーケストラと共演。ラジオのパーソナリティや、NHK-BS「週刊ブックレビュー」の司会を務めるなど、メディアでも活躍。ピアノ教育活動も盛んに行い、異ジャンルのアーティストとのコラボレーションも多数行なう。近年は「最小にして最大のオーケストラ」と称するクラシックユニットOBSESSIONで新境地を開き、レコーディング、海外公演など新たなファン層を広げる。バロックから現代作品 まで幅広いレパートリーをもち、シャープなタッチからは、気品と色彩感にあふれた音色が放たれ、華のあるダイナミックな演奏で聴衆を魅了しつづける、日本を代表するピアニストのひとりである。京都市立芸術大学准教授。


ダン・タイ・ソン
ヴェトナム ハノイ生まれ。カナダ在住。1980年、ショパン国際ピアノコンクールで数々の特別賞とともに優勝し、アジア出身の初の快挙として大きな注目を集め、世界のトップ・オーケストラや名指揮者と共演。2010年ショパンの誕生日である5月1日に、マルタ・アルゲリッチやユンディ・リらとワルシャワでガラ・コンサートに出演し、協奏曲第2番を演奏。10月にはアルゲリッチやネルソン・フレイレ、ベラ・ダヴィドヴィッチらと第16回ショパン国際コンクールの審査員に招かれ、再びワルシャワを訪れた。2010年はショパン生誕200年にあたり世界各国で公演を行った。CDはドイツ・グラモフォン、ソニー、ビクターなどから数々の名盤をリリース。近年はショパン国際ピアノコンクールをはじめ、多くの世界的コンクールの審査員を務め、次代のピアニストの育成にも注力している。

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